保育士の債務整理の方法~任意整理、個人再生、自己破産、過払い金請求の選択肢

未分類

「保育園落ちた日本しね」という言葉が2016年の流行語大賞となったように、保育園の待機児童問題は、日本の社会問題となっていますね。

保育園の待機児童問題の原因の一つとして、保育士不足が挙げられています。

行政側は、保育園を増やそうとしているものの、そこで働く保育士が不足しているのです。

保育士が不足する原因としては、低賃金や厳しい労働環境などがあると言われています。

保育士には、地方自治体が運営する公立保育園で働く人と、企業が経営する私立保育園で働く人がいますが、平成29年賃金構造基本統計調査によると、私立保育園で働く保育士の平均給与の月額は、22万2900円です。

平成29年賃金構造基本統計調査

他方、平成29年の地方公務員給与実態調査結果によると、公立保育園で働く保育士の平均基本給月額は、32万0069円とされており、私立保育園で働く保育士よりも高額です。

平成29年4月1日地方公務員給与実態調査結果

とはいえ、公立保育園で働く保育士は地方公務員なので、公務員試験に合格しなければならず狭き門だそうです。

そのため、保育士として働く人の中には、毎月の生活が厳しく、借入れによって不足した生活費を賄っている人もいるかもしれません。

また、その場しのぎでクレジットカードを使って商品を購入し、翌月の支払いができず、さらに借入れをしてしまうことも考えられます。

こうして、借金が増え、債務整理をせざるを得なくなった人は、「保育士の資格はどうなる?」「勤務先に知られてクビになる?」などと不安に思っているかもしれません。

そこで、この記事では、保育士の債務整理5つのポイントと注意点について詳しく解説します。

債務整理の種類

債務整理とは、借金を整理し、無理なく返済をすることができるようにするための手続きをいいます。

一口に債務整理といっても、いくつかの種類があります。

そこで、保育士の債務整理のポイントと注意点を説明する前に、一般的によく使われる任意整理、破産、個人再生の3つについて、それぞれどのような手続きか見ていきましょう。

任意整理とは

任意整理とは、裁判所を介さず、直接貸金業者などと交渉し、利息や遅延損害金の支払いを免除してもらった上で、毎月の返済額も減額してもらい、借金そのもの(元本)を3年から5年で返済する内容の合意を締結する手続きです。

他の2つの手続きと比較した主なメリットは、①手続きが速くて簡単であること、②財産を残せること、③家族や勤務先などに知られることなく行えることにあります。

破産とは


破産とは、裁判所に申立てをして、破産者の財産を処分してお金に換え、これを債権者への返済に充て、それでも残った借金をゼロにするという手続きです。

破産の主なデメリットは、財産を処分しなければならないこと、資格制限・職業制限を受けることにあるでしょう。

なお、破産の場合、裁判所に手続きの申立てをすると、国が発行するいわば新聞である「官報」に氏名、住所が掲載されることになっています。

個人再生とは

個人再生とは、裁判所に申立てをして、借金の一部を免除してもらい、残った借金を3年(特別な事情がある場合、5年間まで返済期間を延ばすことができます)かけて分割で返済する手続きです。

個人再生も、破産と同じく、裁判所に手続きの申立てをすると、「官報」に氏名、住所が掲載されます。

保育士の債務整理5つのポイントと注意点

債務整理の種類が分かったところで、保育士の債務整理5つのポイントと注意点について見ていきましょう。

保育士資格は取り消されない

保育士資格は、児童福祉法が定める国家資格です。

保育士資格を取得するには、厚生労働大臣の指定する保育士を養成する学校などを卒業し、保育士試験に合格しなければなりません。

債務整理をした場合、この保育士資格がどうなるか非常に気になりますよね。

実は、先に挙げたいずれの方法で債務整理をしたとしても、保育士資格が取り消されることはありません。

児童福祉法18条の19では、保育士資格の取消事由を挙げていますが、その中に債務整理は含まれていないのです。

なお、破産をした場合のデメリットとして、資格制限がなされることを挙げましたが、資格制限を受けるのは、弁護士(弁護士法7条5号)、税理士(税理士法4条3号)、公認会計士(公認会計士法4条5号)など、他人の財産に関わる資格です。

保育士資格は取り消されないので、安心してください。

債務整理をしたことが勤務先に知られる可能性はある

このように債務整理をしたことは、保育士資格の取消事由ではありません。

そのため、必ずしも債務整理をしたことを勤務先に報告する必要はないかもしれません。

では、逆に債務整理をしたことが勤務先に知られてしまう可能性はあるのでしょうか。

この疑問については、裁判所を介する手続きか否かで結論が異なります。

それぞれ見ていきましょう。

任意整理は?

まず、任意整理の場合、債権者と直接交渉するだけですから、秘密裏に手続きを行うことが可能です。

基本的に勤務先に知られることはありません。

破産と個人再生の場合

他方で、破産と個人再生の場合、結論から言うと、勤務先に知られてしまう可能性は高いです。

先に説明したとおり、破産や個人再生をすると、住所、氏名が官報に掲載されます。

もっとも、仕事で必要でもない限り、官報に目を通している人というのはほとんどいないでしょう。

そのため、破産や個人再生をしたことが勤務先に知られるのは、基本的に官報からではありません。

破産や個人再生の場合、裁判所から勤務先の協力がないと得られない書類の提出を求められます。

具体的には、給与明細、源泉徴収票、退職金の見込額証明書などです。

給与明細や源泉徴収票は、既に手元にあればよいですが、退職金の見込額証明書は必ず勤務先に作成してもらう必要があります。

勤務先としても退職金の見込額証明書の作成を依頼されることはあまりないでしょう。

そのため、用途を確認される可能性があり、ごまかしきれないかもしれません。

そうすると、債務整理をしたことが勤務先に知られてしまいます。

「クビ」にはならない


それでは、債務整理をしたことが勤務先に知られた場合、それを理由にいわゆる「クビ」になってしまうことはないのでしょうか。

この疑問については、公立保育園で保育士として働く場合と、私立保育園で保育士として働く場合とで異なるので、それぞれ見ていきましょう。

公立保育園で働く場合

公立保育園で保育士として働く場合、地方公務員ということになります。

地方公務員の場合、「クビ」というと、「免職」という言葉が使われることになります。

公務員の免職は、「懲戒免職」と「分限免職」の2種類に大別されます。

懲戒免職は、公務員として不適切な行為をはたらいた人を罰するために行われる処分です。

一方、分限免職は、組織の能率的運営の維持・確保を目的として行われる処分です。

例えば、勤務実績がよくない場合や、心身の故障のために業務に支障がある場合になされます。

公立保育園で保育士として働く場合、懲戒免職ないし分限免職とされない限り、クビになることはありません。

そして、基本的に、私生活で作った借金の整理をすることは、公務員として不適切な行為を働いたわけではないので、懲戒免職とはされないでしょう。

また、私生活で作った借金の債務整理をすることは、組織の能率的運営の維持・確保とは無関係なので、勤務実績がよくないなど別の理由がないのであれば、分限免職ともならないはずです。

私立保育園で働く場合

一方、私立保育園で保育士として働く場合、勤務先は合理的な理由がない限り、従業員を解雇することはできないとされています。

そして、債務整理をしたという私生活の事柄を理由に従業員を解雇することは、合理的な理由がないと判断されるのが一般的です。

そのため、私立保育園で保育士として働く場合も、クビになることは考えにくいでしょう。

任意整理がオススメ

保育士の人が債務整理をしたとしても、保育士資格は取り消されず、勤務先をクビにはならないことがお分かりいただけたと思います。

もっとも、先に説明したとおり、任意整理以外の手続きだと、勤務先に知られてしまう可能性が高いので、保育士の人が債務整理をする場合、基本的には任意整理を選ぶのがよいでしょう。

そして、保育士の人が債務整理をする場合、任意整理の方法で解決できる可能性も高いのです。

というのも、先に説明したとおり、任意整理の場合、利息と遅延損害金の支払いは免除されるものの、元本は減りません。

そのため、任意整理は、借金の金額がそれほど大きくない場合に限って有効な手続きです。

貸金業法では、個人の借入総額が、原則として年収の3分の1までに制限されているので、年収が低いと、借金の金額も大きくないのが通常です。

冒頭で説明したとおり、私立保育園で働く保育士平均給与の月額は、22万2900円です。

年収にすると267万4800円で、ボーナスを入れても300万円ほどですから、借金の金額は、100万円に留まっているはずです。

仮に、100万円を3年で返済するとなると、毎月の返済額は約2万8000円となります。

一般的に、毎月の返済額の合計が手取り収入から住居費を差し引いた額の3分の1を超えるようであれば任意整理は難しいとされていますが、月給22万2900円としても、家賃が高額でなければ十分に返済可能です。

任意整理の期間中は、実家に住まわせてもらうなどして住居費を抑えれば、さらに余裕をもって返済することができるでしょう。

任意整理ができない場合もある

このように、保育士の人が債務整理をする場合、基本的には任意整理を選ぶのがよいですが、任意整理ができない場合もあります。

任意整理が難しいほどに借金の金額が膨れ上がっていることがあるからです。

というのも、総量規制の対象となる「貸金業者」には、いわゆる消費者金融が該当します。

これに対し、銀行は「貸金業者」ではないので、銀行のカードローンは総量規制の対象となりません。

そのため、例えば既に100万円借りていたとしても、銀行のカードローンを組むことができるのです。

また、クレジットカードを使用した借金(キャッシング)については、総量規制の対象となりますが、クレジットカードを使った商品の購入(ショッピング)は、対象外です。

そのため、クレジットカードを使って買い物をすることで、生活費の不足を補填するようになり、借金の金額が膨れ上がっていきます。

このような場合、もはや任意整理では対応することが難しく、裁判所を介する手続きを利用する必要が出てきます。

破産と個人再生のいずれを選択するかについては、分かりやすくするため、大雑把に言うと、処分したくない財産がある場合は個人再生を、そのような財産はない場合は破産を選択するのが通常です。

もっとも、いずれの手続きがふさわしいかについては、細かい事情によって違ってくるので、弁護士などの法律の専門家に相談して決めた方がよいでしょう。

まとめ



以上、保育士の債務整理5つのポイントと注意点について解説しました。

説明したとおり、保育士として働く人も債務整理をすることが可能です。

ただ、借金が膨らんでくると、選択肢が狭まってきてしまいます。

今、債務整理をしようか迷っている保育士の人は、一日も早く弁護士などの法律の専門家に相談することをオススメします。

コメント

        

検索

カテゴリー

ピックアップ